腸内細菌叢について|杉本憲治クリニック|吹田市の胃腸内科・内視鏡内科

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腸内細菌叢について

腸内細菌叢について|杉本憲治クリニック|吹田市の胃腸内科・内視鏡内科

腸内細菌叢とは

ヒトの消化管には約1000種類、100兆個の細菌が存在し、腸内細菌の持つ総遺伝子数はヒトの持つ遺伝子の100倍以上にのぼることが明らかになっています。
また一部の腸内細菌が作る神経伝達物質(セロトニンやドパミン)により、私たちの情動がコントロールされていることもわかってきており、そのため消化管は「第2の脳」とも言われます。

腸内細菌の働きは?

最近の研究では、食物からのエネルギー摂取において腸内細菌が重要な働きをしていることが明らかになっています。腸内細菌は、ヒトが進化の段階で獲得できなかった食物からのエネルギー摂取に関わる酵素を備えており、ヒトは腸内細菌の作用を利用して食物からエネルギーを獲得しています。
腸内細菌は発酵を通して食物繊維から、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)という重要な物質を産生します。短鎖脂肪酸は、腸管の上皮細胞の増殖や粘液分泌機能、炎症抑制、水やミネラルの吸収のためのエネルギーとして利用されます。

興味深い実験として、肥満マウスの腸内細菌を無菌マウスに移植すると、無菌マウスは肥満になり、それに痩せ型マウスの腸内細菌を移植すると、体重が減少することが報告されています。すなわち腸内細菌は肥満の原因にも関わっている可能性がありますので、ダイエットがうまくいかない方は、良い腸内細菌に変えること(腸活)を意識してみるのも良いかもしれません。

ヒトの腸内細菌叢

ヒトの腸内細菌の99%以上が、ファーミキューティス、バクテロイデス、アクチノバクテリア、プロテオバクテリアの4つのグループ(門)で占められています。腸内細菌の構成は、食習慣が強く影響することが明らかになっており、炭水化物、タンパク質、脂肪、食物繊維などの日常の食事を反映して決定されると考えられています。日本人は日本食の文化で、魚や食物繊維の多い食事でしたので、善玉菌の代表格であるビフィズス菌を多く持つ種族でしたが、最近の食の欧米化により、炭水化物や脂質が増え、食物繊維の摂取が減少しており、ビフィズス菌が減ってきているようです。

肥満の人の腸内細菌叢にはファーミキューティス門に属するルミノコッカス属が増殖し、肥満を抑制するバクテロイデス属が減少していることが報告されています。ルミノコッカス属は糖質の吸収と脂肪の蓄積を促進し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクの上昇をまねくリスクがあります。

ストレプトコッカスやエンテロコッカスはセロトニンを、バシラス属の菌はドパミンを産生します。セロトニンやドパミンは脳にも働く重要な物質であり、いわゆる「幸せ物質」とも言われています。セロトニンやドパミンが多いと幸福感が多く、少ないとうつ病などのリスクになります。

短期的な食事の変化は腸内細菌叢を変化させませんので、良い腸内細菌を育てるには根気強く良い食習慣を継続することが必要になります。

善玉菌と悪玉菌と日和見菌

腸内細菌と聞くと、善玉菌や悪玉菌といった言葉もよく耳にすると思います。善玉菌には乳酸菌、ビフィズス菌が代表格であり、割合的には20%くらいを占めます。悪玉菌にはファーミキューティス門に属するウエルシュ菌が代表格であり、割合的には10%くらいです。ウエルシュ菌は腐敗菌ですので、多くなるとおならや便が臭い原因になります。年齢とともに増えていきますが、脂肪が多い食事でも増えます。残りの70%は日和見菌グループになりますが、ここにはバクテロイデスやファーミキューティス門の多くが属します。実はこの日和見菌が曲者であり、優勢な方に味方します。つまり、善玉菌が元気であれば、日和見菌は善玉菌に味方し、悪玉菌が強ければ悪玉菌に味方します。高糖質・高脂肪な食生活をしていますと、腸内細菌の多くが悪役の味方についてしまい、肥満や老化の促進、抑うつ傾向に向かってしまいます。

腸内細菌叢の悪化と疾患

ウエルシュ菌はタンパク質を腐敗させてアンモニア、アミン、フェノール、インドールなどの有害物質を産生します。これらの有害物質には発がん物質も含まれ、そのほとんどは肝臓で分解されますが、肝臓の処理量を上回ると全身に影響を及ぼします。腸内細菌は短鎖脂肪酸や神経伝達物質などを産生し、全身に影響を及ぼすことから、腸内細菌の悪化は様々な疾患との関係が示唆されています。潰瘍性大腸炎、大腸がん、脂肪肝、糖尿病、高血圧、認知症など全身に及びます。

健康な腸内細菌にするためにできること

腸内のpHが下がる(弱酸性になる)とウエルシュ菌などの悪玉菌の増殖は抑制され、結果として善玉菌が優勢になります。腸内を酸性化するためにできることは二つあります。
それは乳酸菌製剤(プロバイオティクス)をとることと、良い腸内細菌のエサとなる食物繊維(プレバイオティクス)を多く摂ることです。乳酸菌は他の細菌により代謝されて短鎖脂肪酸に誘導され、食物繊維は腸内細菌による発酵により短鎖脂肪酸が誘導されます。短鎖脂肪酸が増えることで腸内のpHが適正に保たれます。

乳酸菌には乳酸桿菌とビフィズス菌があり、各社から多くの製品が出ていますので、ご自身に合ったものを使用してください。その時に少し注意が必要なのは、ヨーグルトで甘いものは糖質過多の原因になりますので、糖質量に注意してください。
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。野菜や海藻類などに含まれますので、オリーブオイルをかけてしっかり取りましょう。(オリーブオイルに含まれるオレイン酸は腸管運動を促進し、便通改善にもプラスになります)

腸活を始めましょう

健全な身体と精神のためには、腸内細菌が非常に大切であることがお分かりいただけましたでしょうか。
早速、腸活を初めてみませんか?そのためにも、まずは胃や大腸の状態を内視鏡で確認しておくのも良いと考えます。当クリニックでは皆様の腸活を支援いたします。